加齢黄斑変性とは、どんな病気なのか?
加齢黄斑変性とは、アメリカでは失明原因の1位と言われていて、恐れられている怖い病気です。
日本よりも研究が進んでいるアメリカでは、50歳以上では、加齢黄斑変性の患者が1400万人いると言われていて毎年、20万人ずつ増えていると言われています。
一方、日本ではアメリカほど統計がしっかりしている状態ではないので、その患者数は80万人、90万人とも言われていますが、人口比から考えて、500万人はいるとも言われています(情報源:視力を失わない生き方~日本の眼科医療は間違いだらけ~ 深作秀春 著)
加齢黄斑変性は、日本と世界とでは、その診断基準が違う
加齢黄斑変性とは、加齢により黄斑部(網膜の中心の部分)に病変が現れて、ものが見えにくくなる病気のことです。世界では、網膜にドルーゼンという加齢物質がたまってきたことを確認して、加齢黄斑変性と診断されます。
ちなみに、この日本での診断基準としては世界の診断基準とは違っていて、「新生血管があるもの」とされています。
では、一体なぜ、「新生血管があるもの」とされているかというと「加齢黄斑変性には新生血管が出るものが多い」という理由からだそうですが、世界の加齢黄斑変性は「新生血管がない加齢黄斑変性」が一般的とされていて、世界と日本ではその診断基準は異なっています(情報源:視力を失わない生き方~日本の眼科医療は間違いだらけ~ 深作秀春 著)
なぜ、新生血管が悪いのか?
公益社団法人日本眼科医会のホームページによると、「すべてが明らかにされているわけではない」という前置きで、下記の様に説明しています。
視細胞の下にある網膜色素上皮細胞は、古くなった視細胞の1部を食べて消化しています。この機能がしっかりしていると、全部消化されカスが残りません。ところが老化によって機能が衰えると、未消化なカスが網膜色素上皮細胞の下に溜まるようになります。
カスは目にとっては異物ですから、たくさん溜まるとそこに炎症が起こります。その炎症を治そうとして、脈絡膜から血管が生えてくるのですが、その血管はたちの悪い新生血管であるわけです。
加齢黄斑変性の診断基準。具体的に、日本と世界とでは、何がどう違うのか?
私たち、患者側の立場からすれば、常に正しい診断結果に基づいて、正しい治療を受けたいと思っているわけですが、日本と世界とで診断基準が違うことは、どちらを信じていいのか分からず、困ってしまいますよね?
そこで、少々長い文章になりますが「視力を失わない生き方~日本の眼科医療は間違いだらけ~ 深作秀春 著」」から「日本と世界の加齢黄斑変性の診断基準の違い」について、引用して紹介したいと思います。
日本では、先にも書きましたとおり、新生血管を持つか、それが消褪したものを加齢黄斑変性としているのですが、国際分類では新生血管の有無は関係なく、加齢物質のドルーゼンの存在が最初の診断になります。
ドルーゼンは、小さな丸い、黄味がかった物質で、網膜色素上皮のレベルにあります。またこれは、顆粒状の油性成分で、膠原繊維がある網膜色素上皮由来とされる沈着物質で、ブルフ膜というところにもあります。
日本の分類方法では、「ドルーゼンのあるドライタイプ」は欧米で多いことになります。ドルーゼンは視細胞を覆って視力障害を起こします。視力が落ちたり、暗視力低下が出ます。そして、50 歳以上の患者では、この小さな黄色の沈着物は良く見られるのです。このうちのある程度が、網膜の変性や血管新生の原因となります。網膜色素上皮異常や網膜色素上皮剝離が起きやすいのです。この後、 12 ~ 20%の症例で、地図状萎縮病巣となることもあります。
一方で、「ウエットタイプの加齢黄斑変性は血管新生と出血を伴う」とされています。日本ではこれが加齢黄斑変性の基準とされているのですね。このような症例では文字通り、血管新生が起きています。
加齢黄斑変性の診断基準については、アメリカと日本で違うように、その診断基準は確立されたものがないのが現状です。
ですので、私たち患者側では自分自身でしっかりと情報を集めて、正しい情報と診断に基づいて、治療を行うようにしましょう。
加齢黄斑変性の症状とは?
では、加齢黄斑変性になってしまうと、どんな症状が出てくるのでしょうか?
初期の症状は見ようとする部分の直線がゆがむ、真ん中が暗く見えるなどの症状が出てきます。
病気が進み出血や染み出しが増えると、その程度がひどくなって視力も下がり、色もよくわからなくなります。その結果、「人の顔が見えない」、「読めない」、「書けない」状態になります。自覚症状が悪化する速度は、新生血管の大きさや場所によってちがいますが、1~2年で視力が0.1に下がるというデータがあります。(情報源:公益社団法人日本眼科医会)
具体的には、下記の動画のような症状が出てきます。
加齢黄斑変性の原因は?
加齢黄斑変性には遺伝的要素がありますが、遺伝する力は弱く、責任遺伝子はまだはっきりわかっていません。
遺伝的に加齢黄斑変性になりやすい体質の人が、発病に影響する環境のなかで長年過ごすと、病気が誘発されると考えられています。加齢黄斑変性の危険因子には、喫煙、太陽光による酸化ストレス、食生活の偏りが挙げられています(情報源:公益社団法人日本眼科医会)
加齢黄斑変性の治療法は?
では、加齢黄斑変性は、どのように治療すればいいのでしょうか?
日本では、病状が進んでしまうと治療が難しいとされていますが日本を代表する眼科医として有名な深作秀春は著書「視力を失わない生き方~日本の眼科医療は間違いだらけ~ 深作秀春 著」」の中で、
わたしが主張し、世界では標準になりつつある、初期のアヴァスティンの硝子体注射と、中期の硝子体手術法では、加齢黄斑変性はきちんと治せるようになりました。末期になると、さすがに治療は難しいので、早く治療をすることが大切です。
今では副作用の強い血管造影剤など使わないで、加齢黄斑変性の新生血管を撮影できる最新機械もでき、当院でも使っています。早く見つけて正しい方法で治療すれば、加齢黄斑変性は治せる可能性が高いのです。あきらめずに、できるだけ早く正しい診断をつけて、正しい治療を開始してほしいと思います。
と言っています。
医師が勧める加齢黄斑変性に予防効果のあるサプリメントとは?
あなたは深作秀春先生をはじめ、多くの眼科医師たちが加齢黄斑変性の予防に効果的であるとして、進めているサプリメントがあることを知っていますか?
それは、ルテインとゼアキサンチンです。
ルテインとゼアキサンチンは、網膜にあるカロテノイドの一種であり、サプリメントの形で摂取すると、重要な予防効果がある可能性があると言われています。
加齢黄斑変性で障害される網膜の黄斑部は、ものを見るのに最も重要な場所です。この中央部にはゼアキサンチンが多く、黄斑部の周辺にはルテインが多くあります。これら黄色の色素であるカロテノイドは、活性酸素を消去し、黄斑部の障害を抑制する可能性があります。
さらに、パソコンやスマホの液晶画面、LEDなどから出るブルーライトは網膜を障害しますが、黄斑部のこれらの黄斑色素は、ブルーライトを遮光する光保護機能を持っています。
摂取されたルテイン、ゼアキサンチンは、血液を通って黄斑部に集まってきて、黄色い色素なので反対色であるブルーの短波長を吸収遮断します。これにより黄斑部の視細胞である錐体細胞などを守る可能性があることもわかっています。
下記の統計のように、インターネットの普及に伴って、私たちはパソコンやスマホなどの液晶画面を見る時間が長くなっていますので、日頃から意識的に予防することは目の健康を守るためには、非常に重要なことです。
出典:総務省情報通信政策研究所 「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
サプリメントの服用や、ブルーライトの遮光ができるメガネを使い、加齢黄斑変性を予防していきましょう。
また初期であれば、アヴァスティンの硝子体内注射も効果的とされています。
さらに中期までならば、深作秀春先生が提唱している近代的な硝子体手術でかなり治せるとされています。
いずれにしても、末期では手遅れですので、早期発見が大切です。
加齢黄斑変性を早期発見するためのチェックリスト
最後に、加齢黄斑変性を早期発見するためのチェックリストを紹介しますのでぜひ、活用してください。
加齢黄斑変性が発症しやすい条件とは?
- 家族内に患者がいる(遺伝疾患でもある)
- 虹彩の色が薄い。
- 高血圧である。
- 高コレステロール症である。
- 女性である。
- 心血管、循環器疾患がある。
- 高齢者である(通常は 50 歳以上がなりやすい)。
加齢黄斑変性の症状とは?
- 徐々にか、もしくは急に、視力が低下する(とくに中央部の視力が低下)。
- 視野中に黒い影が見える(暗点)。
- グリッド方眼のマス目で、線が歪んで見える、もしくは部分的に線が見えない。
- 色の識別が難しくなる。とくに暗い色どうしや薄い色どうしの比較が難しい。
- 明るい光を浴びた後の視機能の回復が遅い。
- 色のコントラストの区別が分かりにくい。
- アムスラーチャート(見え方を確認するための格子状の表)でチェックすると、微細な歪みが発見できる。
生活習慣(ライフスタイル)の改善方法
- 肥満を解消する。
- 禁煙を実行する。
- 高血圧の治療をする。
- 短波長の青、紫外線の光を防ぐサングラスやメガネを装用する。
- ルテインやゼアキサンチンなどのカロテノイドのサプリメントを摂る
(情報源:視力を失わない生き方~日本の眼科医療は間違いだらけ~ 深作秀春 著)
加齢黄斑変性は他の病気の同じように、早期に発見し、早期の治療をすることが重要です。
まとめ
これまで見てきたように、加齢黄斑変性は、失明の可能性がある怖い病気です。
ただし、その診断基準は世界と日本とでは違っていること。それから、治療する医師や病院によっても違ってくるので、まずは正しい情報・知識を集めて、信頼できる医師に早い段階で相談するようにしましょう。
そして、医師の指導に基づいて、ライフスタイルを改善し、サプリメントを摂取するなど、予防・治療を行っていきましょう。